2025年10月02日
幼児教育の世界では、昔から「一番大切なのは遊ぶこと」と言われてきました。それにもかかわらず、近年は幼稚園や保育園で「お勉強」に力を入れる園が増えています。小さなうちから文字や数に触れ、机に向かう時間を持たせることが良いと考える保護者の方が増えているからかもしれません。
確かに、学びに早く取り組めば安心感はあるでしょう。しかし、幼児教育の専門家として強調したいのは、学びには適正な年齢があるということです。
例えば、私の娘は2歳のときにバレエを始めました。親としては音楽や身体表現を通じて感性を育てたいと思いましたが、実際には先生の話を理解することが難しく、動きを真似ることもできず、娘にとって大きな負担になってしまいました。とうとう4歳のときに「行きたくない」と言い出し、お休みすることになったのです。
それから約2年後、6歳になった娘が自分から「またバレエをやりたい」と言い出しました。同じ習い事でも、年齢が違うと全く様子が違いました。先生の話を理解し、動きを自然に真似ることができ、さらに家で自主練習まで始めました。「わかるから楽しい」「できるから楽しい」。そして、すぐにうまくいかなくても理解できるから挑戦し続けられる。そんな姿に、適正年齢の大切さを改めて感じました。
この経験からも、早く始めたからといって頭が良くなるわけではないし、苦労しないわけでもない ことがよく分かります。大切なのは「その子が理解できる時期に取り組むこと」です。適切な時期に始めるからこそ、学びが楽しさとなり、自ら続ける力につながっていくのです。
では、幼児期には何が必要でしょうか。それはやはり「遊び」です。遊びは子どもにとって最も自然な学びの形です。砂場で山を作ることは空間認識や因果関係の理解につながり、友だちと一緒に遊ぶことは社会性や思いやりを育てます。自然の中での発見は探究心を刺激し、創造力を広げます。これらは机に向かう勉強だけでは育ちにくい力です。
一方で、文字や数といった「お勉強」に関心を示す子もいます。その場合は無理に止める必要はありませんが、「やらせる」ではなく「やりたい」を大切にすることが何よりも重要です。興味や意欲が伴わない学びは、ただの負担になってしまいます。
幼児期は、遊びを通じて「わかる楽しさ」「できる喜び」を積み重ねる時期です。理解できる年齢で始めることこそが、学びを一生の財産に変えていきます。ですから、幼児期に大切なのはドリルのような先取り学習ではなく、遊びや体験の中で学ぶ環境を整えることです。
私たち栄幼稚園では、この「適正年齢」の考えを大切にしながら、子どもたちが自然に、そして楽しく学びを感じられる環境を用意しています。遊びの中で芽生える学びこそが、その子の一生を支える力になると信じています。