幼児教育の本質を見つめて

2025年10月22日

―“生きる力”を育むために―

少子化や共働き家庭の増加により、子どもを取り巻く環境や園の選び方にも変化が見られます。
便利さや多様な活動が求められる時代だからこそ、あらためて「幼児教育の本質」とは何かを考える必要があるのではないでしょうか。

幼児教育の真の目的は、“何ができるか”を増やすことではなく、“どう感じ、どう考え、生きていくか”という人間の根っこの部分を育てることにあります。
幼児期は、脳と心、身体の発達が最も豊かな時期。
この時期に「遊び」「人との関わり」「感情のやりとり」を通して培われる経験が、その子の一生を支える“生きる力”へとつながっていきます。

遊びは、幼児にとって学びそのものです。
夢中で砂を掘り、水を流し、思い通りにならずに悔しい思いをし、友だちと笑い合いながら工夫を重ねていく。
その一つひとつの積み重ねが「考える力」「想像する力」「やり抜く力」を育てます。
教え込まれた知識ではなく、自分の心と身体を使って得た“体験の学び”。
それこそが、後の学習意欲や人間関係の基礎となります。

幼児教育の現場では、先生が子どもの小さなつぶやきや表情の変化に丁寧に寄り添い、「気づき」「考えるきっかけ」「挑戦する勇気」を支えています。
それは一見ゆるやかに見えて、実はとても深い専門性を必要とする営みです。
子どもが安心して自分を出せる環境があってこそ、自発的な学びと成長が生まれます。その環境づくりこそが、幼児教育の要といえるでしょう。

幼児期に育つ力は、目には見えにくいものです。
「字が書ける」「計算ができる」といった目に見える成果よりも、人を思いやる気持ち、失敗しても立ち上がる力、自分で考えて行動する姿勢。これらこそが未来を生きる力の源になります。
根がしっかり張った木がどんな風にも倒れないように、幼児期の育ちは、見えないけれど確かな強さを子どもの中に育てていくのです。

“人としてどう育つか”という視点を忘れずに、子どもたちの「今」を大切に見守ること。
それが、未来を生き抜く力へとつながります。
幼児教育は、子どもを預ける場所ではなく、家庭と先生が共に育ちを支え合う場所。
この尊い幼児期にこそ、心が動く瞬間をたくさん経験してほしい。
それが、幼児教育の願いであり、私たちの使命です。

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